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Column コラム

一青妙さんコラム

「私が体験した四国一周」 「四国一周サイクリングPR大使」に就任された一青妙さんが、
2017年3月に参加した四国一周PRツアーの様子をお伝えします。
一青さんはエッセイストや女優として活躍しており、
自転車での台湾一周「環島」を経験しているサイクリストでもあります。

『……四国は私のもう一つの故郷・台湾と大変よく似ていると兼ねてから感じておりました。というのも、台湾は南北に台湾山脈が走り、四国は東西に四国山脈が走っております。山脈を囲むように平野が広がり、町や都市が形成されています。地形的に似ているだけでなく、今回発表された四国一周サイクリングルートが台湾を一周する「環島」の距離とほぼ同じであることも……』
 3月13日愛媛県庁で、私はこんな挨拶をさせていただいた。

 この日は、愛媛県自転車新文化推進協会主催で「四国一周1000キロルート発表会」が行われ、私は「四国一周サイクリングPR大使」に任命されたのである。本当に光栄でありがたいことだし、責任の重さも感じている。
 愛媛県と言えば、思い浮かぶのはみかんだが、いまサイクリストの間では、広島県の尾道市から愛媛県の今治市まで続く約70キロのサイクリングロード「しまなみ海道」が聖地として世界的に有名になっている。
 私も2012年に走ったが、そのときは一緒に走っていた人たちになんとかついていくことしか考えられず、周囲の風景に目を向ける余裕などなかった。
 あれから約5年が経った。その間、少しずつだが自転車と一緒にいる時間が増え、台湾を一周したり、屋久島を一周したりと、すっかりサイクリングにハマってしまっている。そしていま、今度は四国一周のPRツアーに参加している。
 どれだけご当地グルメを食べられるのか。どんな絶景に出会えるのか。考えただけでワクワクしてしまう。

 そもそも、自転車文化が愛媛県に根付いた背景には、中村時広愛媛県知事のリーダーシップによるところが大きい。ご自身も大のサイクリング愛好家として知られているだけでなく、台湾が大好きな中村知事。その証拠に、出走式の合間に、知事は4年前から愛用しているジャイアントの自転車にまたがりながら、「毎年一つずつパーツを好きなものに変えているから、ものすごく愛着があるんだよ」と教えてくれた。語る口調はまるで少年のようであり、愛車を見つめる眼差しはこの上なく優しい。
 3月上旬から今回の四国一周1000キロルート発表会に先駆け、「EHIMEサイクリング プロモーション隊」が愛媛県から出発し、台湾一周を完走した。知事も2日間かけ、約200キロを走破してきたばかりだ。私も知事と一緒に台北ー新竹間の120キロを走行してきた。
 愛媛県によれば、まずしまなみ海道を作り上げ、県内をサイクリングアイランド化した先に、今回の四県連動の四国を一周する「サイクリングアイランド四国」計画があり、多くの人の協力を得て、ようやくそのスタートを切ることができたとのこと。
 県庁前で多くの職員が見送るなか、出陣式が行われた。四国一周約1000キロを3泊4日で回るため、全て自転車で実走することは当然不可能なので、ところどころでバス移動を組み合わせながらの四国一周「環四国」はこうして始まった。

 並走するのは人だけでなく、ジャイアントの特注トラックが大活躍した。四国の道路事情や日本人に合わせて制作されたというスペシャルカーは日本でこれ一台のみ。業務用の大きな冷凍庫にぶら下がる肉枝のように、S字フックで自転車を吊り下げることができる仕様になっているとか。なかを覗けば、本当に自転車がブランと天井から伸びていて、不思議な感覚だが、便利さに自転車を知り尽くしたジャイアントならではのアイディアがいっぱい詰まっていて、乗らない区間の自転車をしっかりと預かってくれる優れものだ。

 県庁前からまず目指したのは、しまなみ海道の四国側の拠点となるサイクリングターミナルのサンライズ糸山。海の向こう側に伸びる吊り橋が見えてくれば、「あ、しまなみ海道!」とテンションも上がる。
 海の上を自転車で疾走するのは本当に気持ちがいい。左右上下と全方位にそれぞれ違う景色が現れるため、この時ばかりは「眼が二つでは足りない」と思ってしまう。

 橋の途中、しまなみ海道で唯一島と吊り橋を結ぶエレベーターに乗る体験もした。十数戸の島民のために設置されたというエレベーターは、自転車やバイクと一緒に乗り込める仕様で、ガラス張りで景色を楽しむこともできる。

 サンライズ糸山にはレンタサイクルもある。ここでオーストラリアからやってきた台湾人夫妻に出会った。
「2泊してしまなみ海道を楽しんでから、松山市に行くのよ」
 彼らは、サドルの調整をしてもらい、颯爽と自転車にまたがり出発していった。

 今回の四国一周PRツアーは至れり尽くせりだ。香川県に入り、弘法大師が生まれたことで有名な「善通寺」に立ち寄った。広大な敷地には、五重塔や樹齢1000年を越える楠などがあり、自然と厳かな気持ちになる。暗闇の中を壁伝いに歩みを進める「戒壇めぐり」も体験し、すっかり観光気分になれた。

 1日目の締めくくりは、夕日の絶景スポットと言われる五色台。
 苦しい……。呼吸することを忘れるくらいの急な坂を登ること約2キロ。見えてきたのは、瀬戸内海に沈みゆく茜色に輝くまん丸の太陽。この景色を眺めれば、いつのまにか上がった息も自然と収まっていた。
 こういう場面にサイクリングの達成感があるからやめられない。

 夕食に食べた、香川で最近有名になってきたB級グルメの「骨付鳥」は、スパイシーな味とカリッとした鳥の皮が絶品。人気に納得させられた一品だ。色々なお菓子もたっぷりとお腹の中におさめた。

 初日で四国一周への期待が大きく膨らんだ。
 サイクリングを通して、四国と台湾が国境を越えた兄弟のような関係になっていければ、これ以上嬉しいことはない。
 今後は、一人でも多くの台湾の人たち、実際に四国を一周する「環四国」に訪れてもらえるように。また、日本人も台湾を一周する「環島」で、台湾に遊びに行くよう、頑張ってPRをしていきたい。
 みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。

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