Column コラム
一青妙さんコラム
三日を迎えた四国一周サイクリングPRツアー。
本日の朝一はまず温泉。運動して、美味しいご飯を食べ、お風呂にゆっくりつかって、たっぷり寝るという健康的な毎日。なんて幸せなのだろう。いつまでもこうしていたい、とふと思った。
午前は、今回の四国一周サイクリングPRツアー最後の表敬訪問場所である高知県庁へ。県庁は明治時代に県民のための講演・会合場所となっていた高知県公会堂跡地に建てられている。市内のホテルから路面電車や朝市など、歴史情緒溢れる城下町の風景を見ながら高知城の追手門に到着した。昨日の強風が嘘のような快晴で、空が抜けるように青い。
城内に入りまず目に入ったのは板垣退助の銅像。遠くから物珍しそうに私たちを眺める視線を感じる。地元の方々や観光客にサイクルウェアに身を包んだ一団はちょっと異様に見えたのかもしれない。
風格のある建物の県庁へ行くと、大勢の職員の方に迎い入れていただいた。
表敬訪問したのは岩城孝章副知事。ルート監修を行った門田基志PR隊長の話に聞き入り、今回の四国一周サイクリングに大いに興味を示してくださった。また、台湾が大好きだということを聞いたので、ぜひ今度は台湾一周を自転車で回る「環島」に、とお誘いした。岩城副知事のほか、坂本孝幸県議会議員も同席してくださった。坂本県議会議員は高知県議会日台友好議員連盟会長も務められており、兼ねてより台湾を心から応援してくださっている。昨年は岩城副知事と一緒に台湾を訪れており、いつか台湾の東海岸をサイクリングしてみたいという熱い思いを語って下さった。
お天気にも恵まれ、高知県のサイクリング愛好家も加わり、一緒に走行した。
高知県の地形は東西に長く延び、四国一の面積を持つ。高知市内を出発し、西側を流れる四万十川を目指す。
愛媛県から出発し、香川県、徳島県とほぼ海岸線を走ってきたので、この辺から山間部に入っていくルートとなる。島々の浮かぶ瀬戸内海や広大な太平洋もいいが、個人的には山間部に入るとなぜか心がホッとする。海よりも山派だからかもしれない。生い茂る木々の変化や、川に沿って 田畑の広がる田園風景、見え隠れする集落。川に沿って人々の暮らしを垣間見ることができる。遠くに走る2両編成の列車を見つけた。
のどかな風景は、母の故郷・石川県中能登町や台湾の東海岸を思い出させる。
日本三大清流の一つと言われる四万十川。まだ新緑の季節ではないが、エメラルドグリーンの色をした川は、空や周囲の景色が映り込むほど澄んでいた。
川にかかる橋が面白い。両岸には一直線に伸びる板のようなものしかなく、欄干が見当たらない。不思議に思っていると、沈下橋だよと教わった。初めて聞く名前だ。なんでも、台風や大雨で川の水位が増した際、水圧で橋が崩壊することを防ぐため、そのまま水面に沈下することを想定して造られたものだとか。なるほど、聞いてみて納得。
四万十川流域のサイクリングには、旧道と新道があり、この2つの道の行き来に沈下橋を渡ることになる。視界をさえぎる欄干がないので、歩いて渡るには最高だが、自転車で走るにはかなり勇気がいる。恐る恐る走り出したが、途中から川と一体化している気分になってきて、楽しい。
電車や自動車ほど速くなく、歩くほどには遅くない。自転車は土地土地の景色が風物を楽しむうえで、本当に最高の乗り物だ。自分の意志で自由に速度をコントロールしながら、気になったところを見て回れるうえに、現地の空気を体感し、健康にいい運動にもなる。
そろそろお腹が空いてきたところで、昼食は四万十川の清流で養殖されたうなぎを食べた。文句なく美味しい!養殖だけれども、天然のうなぎに負けないくらい身が引き締まっていて、タレが染み込み、しっかりと味わうことができる。他にも四万十川は天然鮎が名物だが、今回は鮎のシーズンではなく食べることができなかった。楽しみは次の四国一周にとっておこう。
お腹がいっぱいになった後は、いよいよ四国最南端の足摺岬だ。今日の宿泊先である「足摺パシフィックホテル花椿」は、高知県庁からなんと110キロも離れている。高知県の広さを実感せずにはいられない。
最南端の足摺岬で沈みゆく夕日を見たい。メンバーの心は一丸となり、岬を目指すが、たどり着いた時はまさにギリギリのタイミング。灯台前での記念写真では、興奮のあまり謎の「足摺岬」ポーズが出現。
そのままの勢いで、夕食の七輪にサザエや伊勢海老、サザエ、緋扇貝、海老などをこれでもかと乗せ、焼いて食べる海賊焼きを食べた。貝がぱかっと開き、グツグツと湧き出る貝の甘い汁の匂いで充満した室内は、最終日の夕食にふさわしい豪勢な食事となった。
もちろん、ここでも温泉にたっぷりとつかった。やや褐色帯びたお湯は、ラドン含有の単純弱放射能泉の冷鉱泉で、筋肉痛や関節痛に効くというから、サイクリングの後に最適だ。露天風呂に浸かり、ふと見上げれば星がキラキラと輝いていた。東京で見る星よりもだいぶ大きい。また一つ今回のサイクリングで見つけた幸せな瞬間だった。