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Column 一青妙さんコラム

一青妙さんコラム

 四国一周サイクリングPRツアー2日目は「朝うどん」から始まった。
 夜明け前の暗闇の中、うどんを食べるため宿泊した場所からほど近い「味庄」へ。
 暗い周囲でただ一軒煌々と店の明かりが灯っていたので、すぐにわかった。
 店内に入るといきなり店主らしき人が、黙々と足踏みしながら回っていた。

「最近うどんをきちんと手で打っているお店がどんどん減っているけど、うちのは本当の手打ちだよ」  足元にあったのはうどんの生地だった。

 うどんに卵と味がたっぷりと染み込んだきつねを一枚入れ、口に運ぶ。モチっとしたうどんの心地よい歯ごたえに、手打ちの美味しさが詰まっている。5時30分の開店と同時に訪れたので、最初にお店にいたのは私だけだったが、気づくと、次から次へと、常連さんらしき人たちが現れ、お店は早朝から大賑わいだった。
 うどんという食文化が根付いた香川県ならではの光景なのだろうと感激した。

 四国一周PR隊の本日の主な任務は、香川県庁と徳島県庁の表敬訪問だ。
 まずは香川県庁で浜田恵造香川県知事を表敬訪問。香川県は日本一面積が小さい県にも関わらず、直島などで3年に一度開かれる瀬戸内国際芸術祭やオリーブが名産の小豆島など観光地として大人気だ。フェリーに自転車を乗せ、小豆島を巡ることなどもサイクリストには大変魅力がある。四国を一周するサイクリングロードへの協力を浜田知事にお願いしたところ、わざわざ背広を脱ぎ、サイクルベストを着用し、笑顔で応えてくれた。

 今日は朝から気温が低く、天気は良いが、とにかく風が強い。バスに揺られながら、見えてくるのは海ぎわに強く打ち付けられる白い波しぶき。サイクリストにとって海ぎわは景色を堪能できる嬉しいコースだが、風が強い時は体力を消耗するし、風にあおられて転倒する恐れもあるので注意が必要だ。

 香川県を過ぎ、徳島県に入り、鳴門海峡を眺められる鳴門スカイラインを走った。
 昨日の五色台に続き、なかなかの勾配がある坂道が続く。最近坂道を登るコツがようやく少し分かってきて、その答えは「先をみず、足元を見ること」である。
 果てしなく続く坂道を見ると、心が折れそうになる。足元だけを見ることにすれば、どれくらいの急斜面かを意識することなく、心にかかる負担を軽減できる気がする。それでも結局は坂道なので、ペダルは重くなり、大変なことには変わりないのだが……。
 車輪を回し続けること約20分。疲労もピークになっていたところ、急に体が軽くなった。後ろから、今回のツアー隊長であり、プロサイクリストの門田基志さんが背中を押しに来てくれた。途中、もう一人の手も加わり、2人がかりで押し上げてくれた。サイクリングを通し、仲間の絆も深まり、人の手の大きさと温かさを実感する。

 振り返れば、自分が登ってきたまるでジェットコースターのような急斜面に驚いた。青い空と海、大鳴門橋や淡路島、苦労して登った先に見える景色はやはり格別だ。海にいくつもの“何か”浮かんでいる。牡蠣の養殖とも違う感じだ。聞くと、釣り人用の屋形船だという。中はお手洗いなども完備しているとか。便利なものだ。

 昼食はお遍路弁当を体験。カゴに入ったお弁当には、おにぎりや煮物が入っていて、コンパクトにまとまっていた。

 午後のメインイベントは徳島県庁の表敬訪問。熊谷副知事と面会したのだが、なんと副知事自身が大のサイクリストだった。四国東側半分の約400キロを二日間で完走した経験を話してくれたり、サイクリスト目線でのサイクリングロード整備に深く共感してくれたりと、PR隊との話は大いに弾んだ。

 香川県、徳島県では、各県のサイクリストたちも加わり、一緒にサイクリングを楽しんだ。共通の趣味を持つ、県をまたいでの交流を行うとで、この先、県から四国へ、四国から国へ、国から世界へと、この四国一周サイクリングの輪が広がって行くことが想像できた。

 真面目にPR活動を行なった後の喜びは、やはりご当地グルメではないだろうか。かなりスープの色が濃厚な徳島ラーメンは、味わい深く、生卵を入れて食べる面白い一品。トンポーロウや角煮に似た豚肉のチャーシューは、柔らかくてとろけそう。濃口の味が好きな私には、たまらない。

 夕食は皿鉢料理を堪能した。皿鉢料理は神事の際の儀式食が一般料理に発展したものだが、現在は高知県を代表する郷土料理として知られている。高知県を初めて訪れた私には、何もかもが新鮮に映る。大皿に盛られたカツオ、お寿司、お刺身。のっているおかずは違うけれども、台湾の中華も大皿でみんなで取り分けて食べるので、なんとなく似ている。

 美味しい食事にお酒は不可欠だ。このお酒を飲むのに、高知のお座敷芸「べく杯」を教わった。オカメ、ひょっとこ、天狗の3種類の杯とコマを使った遊びで、どの杯も裏面が凸凹していて、中にお酒を注いだら、飲み干さないと机に置けない形になっている。特にひょっとこは口元に穴が空いているので、指で押さえながら飲まないといけない。
 親になった人はお題を決め、駒を回す。止まった駒が指す位置に座っている人が、駒の上に描かれている図柄と同じ杯にお酒を入れ、一気に飲み干す遊びだ。

ベロベロの神様は 正直の神様よ おささ(お酒)の方へ と おもむきゃれ エェ おもむきゃれ〜 ♫

 最初のうちはみんな様子を見ながらこわごわと進めていたが、お酒が程よく回ってきたころには、歌に合わせ、大いに盛り上がった。酒好きな人が多いという高知県ならではの遊びを思う存分楽しんだ。
 食事の後、温泉にゆっくり身を浸して、英気を養った。

 四国の良さは、どこに行っても温泉に入れること。私はもともと大の温泉好きだが、サイクリストにとって疲れを取るうえで本当にありがたい。
 さあ、明日もがんばるぞ〜!

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